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金沢城下町をゆっくり歩いて 巨樹と歴史を感じよう!
石川県 金沢市
2時間程度(約2km)
金沢市の原型ができたのは戦国時代末(1580年代)。加賀前田家の初代当主利家公が礎を築き、江戸時代以降、百万石を拝領する加賀藩の財力を元に、歴代の当主により、長い年月をかけて町並みや文化、芸術が形づくられてきました。その後大きな自然災害や戦火に遭うことなく現在に至り、素晴らしい文化や歴史的な街並みが市内の至る所に残っています。
市内には「日本三名園」の一つと称される兼六園をはじめ、歴史ある庭園や社寺仏閣も多く存在し、大切にのこされてきた巨樹・古木があちこちに見られます。
古い時代に思いをはせながら兼六園とその周辺を2時間程度で散策するコースを紹介します。
【アクセス】
スポット1「堂形のシイノキ」(しいのき迎賓館)まで
・車:金沢駅から約10分。金沢東IC・金沢西IC・金沢森本ICから約20分
・バス:城下まち金沢周遊バス・兼六園シャトル・北陸鉄道路線バス・西日本JRバス「広坂・21世紀美術館」バス停から徒歩約1分。
まちバス「金沢21世紀美術館・兼六園」バス停から徒歩約2分。
金沢ふらっとバス菊川ルート「21世紀美術館」材木ルート「市役所・21世紀美術館」バス停から徒歩約1分
*運行に変更がある場合もありますので、ご利用の際は各バス会社にお問い合せください
【兼六園と金沢城公園の開園時間】
3月1日~10月15日 7:00~18:00/10月16日~2月末日 8:00~17:00
【兼六園入園料】
大人(18歳以上)320円/小人(6歳~18歳未満)100円
*2021年1月現在
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・幹周り左2,580cm / 右1,750cm
・樹 高11m(左右とも)
・樹 齢400年(推定)
・保護指定国指定天然記念物
・所在地石川県金沢市広坂2丁目1(緯度:36度33分44秒 経度:136度39分28秒)
スポット1
堂形のシイノキ(スダジイ)
「しいのき迎賓館の端正なツインズ」
金沢初の鉄筋コンクリート建築の石川県庁舎を改築した、大正モダンな建物「しいのき迎賓館」の玄関前に佇む一対のシイノキ(正確にはスダジイ)。この一帯は文禄4(1592)年に前田利家が三十三間堂を模した「堂形」といわれる的場を設けた場所であることから、堂形と呼ばれるようになったと伝えられています。また、このシイノキの由来については、三代当主の前田利常がこの地に書院を設けていたときの庭園樹であった、加賀騒動で有名な大槻伝蔵の屋敷に植えられていたものを移植、など諸説あります。
この地は、万治3(1660)年に馬場(乗馬の練習や馬術競技を行う場所)となり、天明元(1781)年には、騎射や馬術の修練の際に老樹が妨害になるというので多く伐り払われたといいます。このシイノキは、その折に伐採を免れたものなのかもしれません。
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スポット2
本多の森のスダジイ巨木群
「巨樹が林立する秘蔵の場所」
石浦神社横の101基の赤鳥居を抜け階段を20数段登ると、鬱蒼とした林に到着。この一帯は、「本多の森公園」といい、金沢市の代表的な自然植生である照葉樹林が残されています。タブノキ・スダジイ・アカガシなどの巨樹の森にはタヌキが住み着き、鳥類や多くの昆虫類が生息しています。
県文化財保存修復工房の奥の斜面は、スダジイやタブノキ、ヤブツバキの照葉樹林で、観光客も少なく静かな散策を楽しむことができます。このほとんど手付かずの林には、幹周り500cmを超えそうなスダジイの巨樹が複数みられます。隠れた巨樹スポットとして巨樹好きにぜひ紹介したい秘蔵の場所です。
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・幹周り759cm*主幹500cm(石川県のデータでは808cm*主幹512cm)
・樹 高20m(石川県のデータでは23m)
・樹 齢不明
・所在地石川県金沢市出羽町3(緯度:36度33分32秒 経度:136度39分44秒)
スポット3
本多の森のケヤキ
「歴史のある建物群と調和する巨樹」
本多の森公園のなかの2本目。スダジイの巨木群のある場所は鬱蒼とした林ですが、こちらは陽光まぶしい広場に立っています。ちなみに広場内ではケヤキは計5本、スダジイは計10本の巨木群を見ることができます(石川県巨樹の会調べ)。
本多の森公園のなかのこの場所は、もともとは加賀藩の筆頭家老である本多家の武家屋敷が軒を連ねていたところで、戦後は金沢市立美術工芸大学の学校用地として利用されていました。石川県立美術館はじめ多くの文化施設もあり、このケヤキのすぐそばには2020年10月に移転したばかりの国立工芸館もあります。
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スポット4
兼六園の根上松(ねあがりまつ)
「兼六園といえばこの松」
兼六園といえば、黒松「唐崎の松」と並んで「根上り松」が有名です。大小40数本もの根が地上2mにまでせり上がって迫力があります。この松は、十三代当主の前田斉泰(なりやす) が土を盛り上げて若松を植え、成長後に土を除いて根をあらわにしたものだと伝えられています。
「根上り松」と名付けられた木は全国で見られますが、その大半は雨水の侵食によって根元がえぐられ、根が露出してしまっている災害木ですが、この松は、造園技術によって完成した美しい盆栽のような巨樹です。
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スポット5
金沢城公園のスダジイ
「金沢大学跡の植物園をしのぶ」
兼六園の桂坂口を出て坂道を下り、石川橋を渡って石川門から金沢城公園へと入って行きます。金沢城公園は、面積約3万平方メートル、市内の中心部で自然林が最も多く残っている場所です。江戸時代には加賀藩主前田氏の居城であった金沢城は、明治から戦前にかけて陸軍施設となった後、戦後は金沢大学の敷地となりました。この金沢大学時代に、旧本丸は植物園となり、金沢大学が移転し公園となった今でも、植物園の跡地には、当時をしのばせる植物がたくさん残っています。
植物園の跡地には幹周り500cmを超える見ごたえのあるスダジイが12本もあります(写真は最大のスダジイ)。また、幹周り300cmを超えるタブノキは計7本、モミは計3本あり(石川県巨樹の会調べ)、巨木林好きには非常に魅力的なエリアになっています。
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そのほかの見どころ
ちょっと足をのばして 神明宮の大ケヤキ
金沢市の保存樹指定第1号。金沢は街中のいたるところに巨樹・古木・巨木林が残っており、市はこれらの樹々を保存樹に指定し、所有者と一体となって緑の多い都市の景観づくりを進めてきました。なかでも、このケヤキは897cm(平成29(2017)年計測)と金沢市の巨樹でいちばんの幹周りを誇り、ケヤキとしては石川県下最大で、樹齢も800年以上と推定されています。
神明宮は市民から「おしんめさん」の愛称で親しまれており、300年以上続く春秋の祭礼名物あぶり餅神事も有名です。周辺には隠し階段など様々な仕掛けで「忍者寺」として有名な「妙立寺」や国指定天然記念物の「松月寺のサクラ」、金沢三茶屋街のひとつ「にし茶屋街」などがあり、情緒あふれる町並みを散策することができます。