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  • 由緒ある大いなる宮居(みやい)「大宮」を歩く

    埼玉県
                   武蔵一宮氷川神社・大宮公園

    2時間程度(約3km)

     「大宮」の地名は、武蔵一宮氷川神社を大いなる宮居(みやい)とあがめたことに由来します。東京・埼玉を中心に約200社ある氷川神社の本宮であり、明治元年に明治天皇が江戸城に入城してすぐに行幸されたのがこの氷川神社です。
     氷川神社まで続く一の鳥居からはじまる2kmの参道は日本一長いとされ、ケヤキの巨樹を含む約650本の樹木が生育しています。賑やかな都市景観のなかにある一筋の緑道は、市民の憩いの場でもあります。

     大宮公園は、氷川神社の境内地の一部を官営化して明治18年に開設された埼玉県内初の県営公園です。開園当初はマツや雑木林に覆われた武蔵野の面影が濃く、熱海と並ぶ東京の奥座敷として多くの文学者に愛され、正岡子規、永井荷風、寺田寅彦、樋口一葉、森鴎外、田山花袋たちが、その作品に大宮公園の描写をしています。現在はサクラの名所として、また無料の「小動物園」や100〜200円で楽しめるレトロ感ある乗り物、季節ごとに野鳥が見られる池などが人気で、県内で一番利用者の多い県営公園として親しまれています。

     12路線が乗り入れる巨大ターミナル大宮駅からケヤキ並木の氷川参道を通って歴史ある氷川神社へ。そして広々とした大宮公園を散歩しながら巨樹をゆったりと鑑賞するコースをご紹介します。

    【アクセス】
    東日本旅客鉄道(JR東日本)・東武鉄道・埼玉新都市交通「大宮駅」の東口からスタート

    【行程】
    大宮駅
     ↓ 徒歩10分程度(600m)*大宮駅東口から参道交番まで
    スポット1 氷川参道の並木
     ↓ 徒歩3分程度(250m)
    スポット2 天満神社のケヤキ
     ↓ 徒歩10分程度(650m)
    スポット3 氷川神社の夫婦楠
     ↓ 徒歩3分程度(100m)
    スポット4 大宮公園のメタセコイア
     ↓ 徒歩13分程度(700m)
    スポット5 埼玉百年の森のクスノキ
     ↓ 徒歩13分程度(700m)
    大宮公園駅

  • 氷川参道の並木

    *氷川の杜まちづくり協議会が実施した
     2002年から2010年の8年間の総数697本の調査より
    ・樹 種ケヤキ62.5% その他の樹種37.5%
    ・幹周り平均134cm。うち3mを超えるもの15本
    ・樹 高平均13.3m
    ・保護指定巨木を中心とした11本がさいたま市指定天然記念物
    *2022年3月現在
    ・所在地埼玉県さいたま市大宮区

    スポット1

    氷川参道の並木

    「約650本のケヤキ並木」

     大宮駅東口から目抜き通りである大宮中央通線を10分ほど東に歩くと、交差点の右手に参道交番が見えます。交番は参道の真ん中あたりに位置しており、左に曲がると「平成ひろば」と呼ばれるさいたま市が整備した都市緑地があり、さらに北上すると、二の鳥居が見えてきます。
     この南北約2kmにわたる約650本の並木は、ケヤキを中心とした武蔵野特有の常緑広葉樹や落葉広葉樹などで構成されています。昭和初期までは参道はスギ並木でしたが、戦時中に燃料とされたことや車の振動や排気ガス等の影響によりスギが衰退したことからケヤキが植林され現在に至っています。近年は弱ってきたケヤキもあり、近隣住民が中心となって組織された団体「氷川の杜まちづくり協議会」が、この貴重な緑の財産を次世代に引継ぐために樹木調査を実施し、同協議会・氷川神社・さいたま市が保全対策につなげています。

  • 天満神宮のケヤキ

    ・幹周り466cm
    ・樹 高23m
    ・樹 齢不明
    ・所在地埼玉県さいたま市大宮区東町2丁目191−2
    天満神社境内

    スポット2

    天満神社のご神木

    「勉強の神様のケヤキ」

     小さな神社なので参道の脇にありながら見過ごしてしまいがちですが、二の鳥居前の信号の少し手前にあります。ケヤキのご神木は拝殿の後ろにあり、こちらも目立つとは言い難い巨樹ですが、遠くから眺めると樹冠が大きく立派です。
     氷川神社の広い境内には、小さな神社が8社点在しています。これらの神社は摂社(せっしゃ)と末社(まっしゃ)と呼ばれ、摂社は氷川神社の祭神と縁の深い神様が祀られており、末社には摂社以外の縁のある神様が祀られています。参道沿いにあるこの天満神社は末社のひとつで、菅原道真公(すがわらみちざねこう)を祀った全国に一万社以上ある学問の神社のひとつで、受験生に人気のある神社です。

  • 氷川神社の夫婦楠

    ・幹周り510cm(主幹270cm)*1988年測定
    ・樹 高18m
    ・樹 齢99年以下
    ・所在地埼玉県さいたま市大宮区高鼻町4丁目
    氷川神社境内

    スポット3

    氷川神社の夫婦楠

    「由緒あるパワースポット」

     三の鳥居をくぐり、すぐ右手にある「夫婦楠」は、氷川神社のご神木として必見の巨樹です。ご祭神の須佐之男命(すさのおのみこと)が八岐大蛇(やまたのおろち)を倒して稲田姫命(いなだのひめのみこと)と結婚し子供を授かったことから、縁結び、結婚運や夫婦円満のご利益があるとされ、この夫婦杉に祈願するとより一層願いが成就するとされています。
     氷川神社の境内には神社の起源とされる湧水がわく「蛇の池(じゃのいけ)」があり、かつてさいたま市全域に広がっていた広大な湖沼「見沼」の水源の一つと言われています。現在は生息していませんが、見沼はホタルの名所として知られており、その昔、氷川神社は見沼川のホタルを皇室に献上していたそうです。市民団体である「氷川ほたるの会」を中心にした活動では、再びホタルが住める環境を取り戻そうと、環境美化活動などに力を入れており、大宮の原風景であるホタルが飛び交う姿を、蛇の池に復活させる運動を進めています。

  • 大宮公園のメタセコイア

    ・幹周り327cm・312cm・294cm
    ・樹 高22m・22m・21m
    ・樹 齢不明
    ・所在地埼玉県さいたま市大宮区高鼻町4丁目
    大宮公園内

    スポット4

    大宮公園のメタセコイア 3本

    「絵になる紅葉と新緑」

     氷川神社の境内と大宮公園の境にある「ひょうたん池」を過ぎると、すぐに大宮公園に足を踏み入れることになります。大宮公園は、氷川神社の境内地を一部官営化して明治18年に開設された、県内初の県営公園です。明治末期から昭和初期の大宮公園は、熱海にも匹敵するリゾート地で旅館や料亭が幾つもあったそうですが、時代の要請に応えて拡張や整備が続けられ、現在の姿となりました。
     ひょうたん池の横にある「白鳥池」の畔ではメタセコイアと噴水の美しい景観を堪能することができます。とくに遠くからもよく見える秋の黄葉と春の新緑は見事です。
     メタセコイアの名前は、日本の植物学者が、「セコイア」という木の化石から未知の植物を発見して命名しました。すでに絶滅した植物だとされていたところ、昭和20年に中国の学者が中国奥地で見つけたことから「生きている化石」と呼ばれ、種子や苗木が中国から世界中に送られ多くの国で育っています。

  • 埼玉百年の森クスノキ

    ・幹周り560cm
    ・樹 高約20m
    ・樹 齢90年以上
    ・所在地埼玉県さいたま市大宮区高鼻町4丁目
    大宮公園内

    スポット5

    埼玉百年の森のクスノキ

    「大正期のリゾートの面影を探して」

     大宮公園内にある「歴史と民族の博物館」の南東に「埼玉百年の森」はあります。埼玉百年の森は埼玉県設立百周年を記念して造られた一角で、大正 10年に建てられた「遊園地ホテル」の門柱が残されているなど、公園初期の面影のある場所です。遊園地ホテルは瀟洒な西洋風の建物で、渋沢栄一らが講演を行ったこともあるそうで、そう知って歩くと古き良き時代だった頃の面影が立ち上ってくるようです。
     この百年の森にあるクスノキは見ごたえありです。誰もいない森のなかで静かに巨樹と対峙し、その樹皮に触れることもできます。また、この一角では他にも大きなスダジイも見られます。




  • 氷川参道の大鳥居

           そのほかの見どころ

    氷川参道の大鳥居

     氷川参道には3基の大鳥居があり、神社に遠い順から「一の鳥居」、「二の鳥居」、「三の鳥居」と呼ばれています。なお、このコースでは二の鳥居の手前から歩き始めることになります。
     二の鳥居は昭和51年に明治神宮より寄贈移築されたもので、現存する木造の鳥居では関東で一番大きいと言われています。台湾の阿里山で伐採された樹齢1200年以上のヒノキで作られています。