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  • 徳川御三家のお膝元「水戸」の巨樹と史跡をめぐる

    茨城県

    半日程度

     水戸といえば、水戸黄門として知られる藩主の徳川光圀(みつくに)と、日本三名園のひとつである偕楽園で開催される梅まつりを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

     水戸は古くから那珂川の港として栄え、「水運の戸口」とされた重要拠点でした。江戸時代になって、徳川家康は水戸が東北地方の外様大名からの脅威を阻む絶好の地と判断し、十一男頼房(威公)を25万石で封じ、これが徳川御三家のひとつ水戸徳川家の始まりとなりました。「大日本史」を編纂した第2代藩主徳川光圀や、第9代藩主徳川斉昭(なりあき)など、傑出した藩主の元で行われた数々の治績の一部は、現在でも水戸藩ゆかりの史跡として残っています。

     今回は、水戸徳川家ゆかりの史跡のなかでも、水戸徳川家の居城があった「水戸城址」、徳川斉昭(なりあき)が天保12 (1841) 年に開設した江戸時代最大の藩校である「弘道館」と天保13年(1842年)に「偕(とも)に楽しむ場にしたい」という願いを込めてつくった「偕楽園」の3ヶ所をめぐる巨樹観察コースをご紹介します。

    【アクセス】
    水戸駅まで
    ・電車:東京駅からJR常磐線特急で74分
    ・高速バス:東京駅八重洲南口から110分
          仙台駅前から(二本松経由)から290分

    水戸駅から偕楽園まで
    ・水戸駅北口より偕楽園行きバスで約20分
    *4番乗り場(茨城交通)、もしくは 6番乗り場(関東鉄道)
    *本数が限られていますので、事前にバス会社のHPなどでご確認ください

  • 水戸城跡の大シイ

    ・幹周り430cm・330cm
    ・樹 高約20m
    ・樹 齢推定400年
    ・所在地水戸市三の丸2-11-2

    スポット1

    水戸城跡の大シイ

    水戸駅周辺

    「戦国時代から水戸の歴史をみてきたシイ」

     水戸城は徳川御三家のひとつ水戸徳川家の居城で、日本最大級の土造りの城でした。この大シイがあるのは、徳川光圀が「大日本史」編纂(へんさん)のため水戸城のなかに設立した水戸彰考館(しょうこうかん)があった場所で、現在は水戸市立第二中学校になっています。
     戦国時代から自生していたと伝えられる歴史的にも貴重な樹木であり、水戸市の天然記念物に指定されています。
     2株のスダジイの巨樹は、水戸二中の白壁沿いにあり、道行く人がその大きな木陰で一休みできるようベンチが置いてあります。

  • 弘道館のクスノキ

    ・幹周り460cm
    ・樹 高約25m
    ・樹 齢推定300年
    ・所在地水戸市三の丸1-6-29

    スポット2

    弘道館のクスノキ

    水戸駅周辺

    「武家屋敷にあったクスノキ」

     弘道館は、「教育によって人心を安定させ、教育を基盤として国を興す」という建学の精神のもと設立され、天保12(1841)年から31年間に渡って人材の育成に貢献しました。徳川家最後の将軍となった徳川慶喜(よしのぶ)は、幼少期に弘道館で学び、大政奉還後ここで謹慎生活をおくりました。
     弘道館公園には、斉昭の自筆による「要石(かなめいし)歌碑」を挟んで2本のクスノキがあります。右側の大きなクスノキは樹齢300年程度と推定され、弘道館のできる以前からその地の武家屋敷に植えられてあったものと言われています。
     ちなみに弘道館の施設見学は有料で9:00~17:00(10月1日から2月19日は9:00~16:30)のみの開館ですが、弘道館公園は無料で24時間開園しています。

  • イチョウ

    ・幹周り260cm
    ・樹 高4.5m
    ・樹 齢不明
    ・所在地茨城県水戸市常磐町1-3-3偕楽園

    スポット3

    二季咲桜

    偕楽園

    「冬に咲く可憐な桜」

     偕楽園の桜といえば「左近の桜」が有名でしたが、残念ながら令和元(2019)年の台風15号の強風で根本から倒れてしまいました。
     偕楽園には「左近の桜」に次ぐ名木として、冬場に花を咲かせる二季咲桜(にきざきさくら)があります。好文亭の近くの見晴らし広場の広々とした芝生の真ん中にあり、解説板が立てられているのですぐにわかるでしょう。秋から冬にかけてはぽつりぽつりと咲き、春には満開に咲き誇ります。冬空の下、小さく開く一重の花びらが可憐です。初代の樹は水戸藩士久米某邸にあったもので、この二季咲桜は初代の樹から接ぎ木で増やした子孫のうちの1本と伝えられています。

  • 太郎杉

    ・幹周り570cm
    ・樹 高25m
    ・樹 齢約800年(推定)
    ・所在地茨城県水戸市常磐町1-3-3偕楽園

    スポット4

    太郎杉

    偕楽園

    「古くからのパワースポット」

     偕楽園には明るい日差しが降り注ぐ広場や梅林と、薄暗く幽玄な「孟宗竹林」や「大杉森」という、陰陽2つの世界があります。太郎杉のある場所は、このうち「陰」の「大杉森」を抜けた崖下になります。ここは昔から湧き水が豊富で、夏でも冷たく、玉のような澄んだ地下水が途切れることがなかったそうです。太郎杉の前から湧き出る水は吐玉泉(とぎょくせん)と名づけられ、眼病に効くといわれており、こんこんと水をたたえる吐玉泉とそれを見下ろすようにそびえる太郎杉は古くからパワースポットとされています。
     かつて太郎杉の周囲にはスギの巨樹があり、大きい順に五郎杉まであったそうですが、現在残っているのはこの太郎杉のみです。

  • 偕楽園のシラカシ

    ・幹周り360cm
    ・樹 高10m
    ・樹 齢不明
    ・所在地茨城県水戸市常磐町1-3-3偕楽園

    スポット5

    偕楽園のシラカシ

    偕楽園

    「吐玉泉の傍らにたたずむ隠れた名木」

     吐玉泉を挟んで太郎杉の反対側、クマザサに覆われた斜面にシラカシの巨樹があります。シラカシは高さの割に幹が太くならない樹種であり、日陰でもよく生長します。
     シラカシは、その硬くて丈夫な材質から武具や農耕具などに広く利用され、北関東では、厳しい冬の季節風から家屋敷を守る生垣(屋敷林)として植えられてきました。このシラカシも、もともとは家や畑を守るために植えられたのかもしれません。知らずに歩いていると通り過ぎてしまいそうですが、こちらのシラカシも偕楽園にある隠れた名木のひとつといえます。




  •                  そのほかの見どころ

             千波(せんば)湖

     水戸市民の憩いの場所として親しまれている千波湖は、1周約3kmのひょうたん型の湖です。四季折々の花を楽しみながら水鳥を観察することができます。偕楽園と千波湖の周辺は公園として整備されており、全体の面積は合計約300haで、都市公園としては、ニューヨーク市のセントラルパークに次いで世界第2位(!)だそうです。