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  • 日本初の山岳リゾート「上高地」の巨樹を楽しむ

    長野県(中部山岳国立公園)

    2日間

     上高地は、山岳景勝地として中部山岳国立公園に指定されるとともに、国の特別名勝および特別天然記念物にも指定されています。1933年に日本で初の山岳リゾートホテルが開業し、自然を満喫しながら快適に過ごせる憧れの場所でもあります。

     上高地を代表する樹木といえば、梓川の河畔に生育するケショウヤナギやバスターミナル付近に広がるカラマツ林が有名です。昭和初期に国立公園に指定される以前、植林や牧畜がおこなわれていた上高地は若い木が多いのですが、2005年から2006年にかけて実施された巨樹の調査*では14樹種、117本の巨樹が確認されており、梓川沿いにのびる自然遊歩道では、素晴らしい景色を楽しみながら、ハルニレやカラマツなどの巨樹を見ることができます。

     今回は、上高地のシンボルともいえる河童橋を起点に、大正池までの全長約4.0km、往復3時間ほどのコースと、徳沢までを往復する少し歩きごたえのある11.0kmの2つのコースを含む、1泊2日のコースを紹介します。

    *櫛田(2007)上高地地区の巨木調査.山の自然学研究会編 研究報告書 第5号,p61-64.

    【アクセス】
     上高地へは年間を通してマイカーでは入れないため、公共交通機関での移動がおすすめです。ここでは便数の多いアクセス方法をご紹介します。
    ・電車:「松本駅」から松本電鉄上高地線で「新島々駅」下車、路線バスまたはタクシーで上高地まで約1時間30分
    ・直行バス:関東では「東京駅」「新宿駅」、中部では「名古屋駅」、関西では「大阪駅」など各地から乗り換えなしで上高地へ直行(要予約)
    ※上高地は、冬期(11月中旬から4月中旬まで)は閉鎖されます。開山期間の詳細は上高地ビジターセンターのウェブサイト等をご参照ください。
    ※上高地内では、大雨の影響等により通行できない又は通行に支障のある遊歩道がある場合があります。このため、訪問される際には、上高地インフォメーションセンターのホームページで事前に情報収集いただくよう、お願いいたします。

  • 大正池ホテル横のハルニレ

    ・幹周り440cm
    ・樹 高20m
    ・樹 齢不明
    ・所在地緯度:36度13分44秒
    経度:137度37分10秒

    スポット1

    大正池ホテルの横のハルニレ

    まずは足慣らしでハルニレまで

     河童橋から大正池までは往復3時間ほど。河童橋をスタートし、自然研究路の梓川左岸コースを進むと、遊歩道が林の中を通る「林間コース」と大正池の縁を通る「梓川コース」に分岐します。おすすめは森林浴しながら木道を歩く「林間コース」。「梓川コース」との合流地点の先にある田代湿原は穂高岳を背景に湿原が広がる人気のスポットで、湿原を渡る桟橋を大正池を右に眺めながら歩くと、すぐに大きなハルニレが見えてきます。
     ハルニレの巨樹は上高地の巨樹14種117本中50本を占める、上高地の巨樹でいちばん多い樹種。なかでもこのハルニレは上位の大きさで、上高地の玄関口である大正池のほとりで大きく枝を広げて訪れる人を出迎えてくれます。

  • 河童橋右岸のケショウヤナギ

    ・幹周り240cm
    ・樹 高13m
    ・樹 齢不明
    ・所在地緯度:36度14分56秒
    経度:137度38分15秒

    スポット2

    河童橋右岸のケショウヤナギ(5本)

    上高地といえばケショウヤナギ

     2日目は本格的に河童橋から上流の徳沢までハイキングするコース。スタート地点の河童橋脇に、上高地を代表する植物であるケショウヤナギの大木があります。
     ケショウヤナギは日本では上高地から松本盆地にかけての梓川流域と北海道の一部にのみ分布しており、他の植物が生育できない礫(れき)質の河原で生育します。河童橋のたもとのケショウヤナギは巨樹というには幹周りが小さめですが、生育基盤の不安定な河原で育ち、寿命も100年程度といわれるケショウヤナギとしては、なかなかの大きさといえるでしょう。

  • 梓川右岸コースのイチイ

    ・幹周り340cm
    ・樹 高12m
    ・樹 齢不明
    ・所在地緯度:36度15分12秒
    経度:137度38分14秒

    スポット3

    梓川右岸のイチイ

    素晴らしい風景のなかに立つイチイ

     河童橋からは河童橋・明神自然探勝道の梓川右岸コースを進みます。しばらく進むと道は川沿いを離れ、イチイやカラマツといった針葉樹の林の中を進む道になります。その道のすぐ脇にイチイの巨樹が現れます。
     イチイは常緑針葉樹で、成長が遅いため材は緻密(ちみつ)で耐久性があり、赤みがかった芯材(木材の中心部分)はいい艶が出るため彫刻や細工物に使われてきました。一説には、イチイの名前は、仁徳天皇時代に正一位(しょういちい)の位の貴人が持つ笏(しゃく)をイチイで作らせたことに由来するといわれています。
     河童橋・明神自然探勝道(梓川右岸コース)にはこのイチイの他にも針葉樹の巨樹が点在しており、上高地のすばらしい風景の中、巨樹を眺めながら散策することができます。

  • 徳沢キャンプ場のハルニレとカツラ

    ・幹周り左(カツラ):510cmm
    右(ハルニレ):393cm
    ・樹 高左右ともに14m
    ・樹 齢左右ともに不明
    ・所在地緯度:36度15分55秒
    経度:137度41分25秒

    スポット4

    徳沢キャンプ場のハルニレとカツラ

    キャンプ場の爽やかな2本

     梓川に架かる明神橋を渡ると奥上高地自然探勝道に入ります。道は平坦ではありますが、登山道らしくなってきます。上流に歩いて1時間ほどで徳沢に到着。昭和初期までは牧場があったため周辺は開けた草原となっており、キャンプ場や、井上靖の小説「氷壁」ゆかりの宿として有名な「徳澤園」があります。
     このキャンプ場に立つハルニレとカツラの2本の巨樹は、広々とした芝生のテントサイトの中央にすっくと立つ姿がなにしろ爽やか!ハルニレもカツラも根を踏まれないように根元が囲いで保護されています。上高地のハルニレの巨樹50本のうち30本が徳沢周辺に集中していますが、これらの巨樹は昔から大切に残されているのだろうと思われます。
     5月中旬には周囲にニリンソウの群生が咲き乱れ、10月中旬頃からは紅葉も見どころです。

  • 水戸黄門カラマツ

    ・幹周り458cm
    ・樹 高18m
    ・樹 齢不明
    ・所在地緯度:36度15分04秒
    経度:137度38分55秒

    スポット5

    水戸黄門カラマツ

    腰の曲がった大きなカラマツ

     徳沢からは奥上高地自然探勝道を戻り、河童橋・明神自然探勝道への分岐では、明神橋を渡らずに左岸コースを下ります。この道の途中に、幹周4mを超えるカラマツがあります。このカラマツは腰が曲がったような特徴的な形をしており、両脇に生えたウラジロモミの若木が、助さん、格さんが控えているように見えたことから、地元のガイドさんが「水戸黄門」と紹介するようになったそうです。現在では、残念ながら片方のお伴の若木は枯れて切られてしまっています。
     上高地では広い範囲でカラマツが見られ、上高地にある巨樹の本数はハルニレに次いで多い樹種です。また、落葉する針葉樹であるカラマツは、新緑や黄葉がとても美しく、特に黄葉の時期の終わり頃、金色の雨のように降るカラマツの落葉は幻想的です。




  • 上高地ビジターセンター

    開館期間4月中旬〜11月15日(期間中無休)※冬期閉館
    開館時間8:00 ~ 17:00
    入 館 料無料
    住  所〒390-1516 長野県松本市安曇上高地
    連 絡 先0263-95-2606
    サイトURLhttps://www.kamikochi-vc.or.jp/index.html(上高地ビジターセンター)

    そのほかの見どころ

    上高地ビジターセンター

     上高地ビジターセンターは、河童橋・明神自然探勝道の左岸コース、梓川の脇を流れる清水川の橋を渡ったところにあります。上高地の自然に関する展示、野外での自然教室、映像の上映やレクチャーなどを通して、上高地の自然への理解と自然に親しむために必要な情報の提供を行っています。
     館内のガイドカウンターでは、天気情報や注意情報なども提供しており、ガイドウォーク(有料)の申し込み受け付けも行っています。