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和田稲荷のシラカシ【東京都】

2023.12.26

 「生物多様性」、最近TV番組や新聞等でこの言葉を一度は見聞きした人も多いのではないでしょうか。これは多種多様な生きものたちのつながりを意味する言葉です。そして、このつながりが維持されることによって人間を含めた生きものたちは日々生きていくことができています。巨樹もまたこの生物多様性の一員であり、様々な生きものとつながっています。ここでは昆虫を例に生物多様性の視点から巨樹を紹介したいと思います。
 今回は生きものが多く見られる夏に、東京都練馬区にある「和田稲荷のシラカシ」に会いに行ってきました。このシラカシは住宅地にある神社でひっそりと生きています。

和田稲荷のシラカシ

和田稲荷のシラカシ



 神社に着き、早速観察してみると幹からは樹液が出ており、コケも生え、樹洞も形成されていました。そして昆虫も探してみると樹液に集まる虫(カナブン、ノコギリクワガタ、キイロスズメバチ等)、樹皮にいる虫(ニイニイゼミ、アリ類等)等、多くの虫を見つけることができました。個体数も比較的多く、住宅地にある木にこれだけ集まるのかと感心してしまいました。また、根本周辺にはフラス(幼虫のフンと木くずが混ざったもの)や脱出孔、コガネムシ類の幼虫のフンもありました。このことから、すぐにこの木は周辺の虫たちの貴重な拠り所(採食場、繁殖場等)になっているのだと理解しました。

シラカシを下から見上げる

シラカシを下から見上げる



 これは木自体に様々な環境が形成される巨樹ならではの現象であり、巨樹特有の生きものとのつながりだと私は思います。そして、昆虫以外の生きものとのつながりのことも考えると、このシラカシを含め、巨樹は生物多様性上とても重要な存在であることが分かりました。
 短時間の観察でしたが、このシラカシからは色々なことを教えていただきました。ありがとうございました。

和田稲荷のシラカシの地図

幹周り 380㎝(平成6年保護指定時)
樹高 18m(平成6年保護指定時)
樹齢 不明
保護指定 ねりまの名木
所在地 東京都練馬区石神井町1-21 和田稲荷神社境内
交通 西武池袋線「石神井公園駅」下車、南口より徒歩約3分
著者 矢口芽生(東京都在住、全国巨樹・巨木林の会会員)