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浄善寺(じょうぜんじ)の大銀杏【島根県】

2023.10.27

 「山奥でひっそりと暮らしてきた巨樹も多いのですが、反対に長い年月の間、人々の生活の中で育まれてきた巨樹もたくさんあります。必ずしも天然記念物級の大木とは限りませんが、地域の人々と巨樹の深い関わりを物語るドラマがあります。」
 全国巨樹・巨木林の会 高橋進会長が仰っていた言葉ですが、大銀杏はまさに地域に根付き、人々のイトナミ(営み)とともにある巨樹です。
 浄善寺が現在の地に移ったのは明治期になります。発祥は天文年間の石見銀山に遡りますが、移転を重ね、明治5年の浜田地震被災を機に明治7年に現地に移りました。土地を譲り受ける際に約束がありました。「大樹の森を守ってくれるなら」と。この約束の言葉からすでに人々の想いがある場所であると伺えます。そして事実として今も人とともに歩んでいる巨樹です。

春の浄善寺の大銀杏(写真:永瀬比奈子)

春の浄善寺の大銀杏(写真:永瀬比奈子)



 春の新芽で銀杏の別名【鴨脚樹】にちなみ「本当に葉っぱが(鴨の)足みたい!」と一緒に喜び、緑盛んな時期には木陰で読書を楽しむ方・仲睦まじいお二人がお茶を楽しんでいる姿もあります。秋には「黄金の絨毯みたいだねー!」と楽しみ、季節の仕舞事ではみんなで落葉を片付け、冬には大銀杏の雪化粧を楽み、また春の新芽を待ちます。
 四季を通して、大銀杏が人々とともにあることをいつも感じています。

葉を落とした冬の浄善寺の大銀杏(写真:永瀬比奈子)

葉を落とした冬の浄善寺の大銀杏(写真:永瀬比奈子)



 近年、地域の方が落葉を活かしていこう!と声を上げて下さいました。地域循環活動として、大銀杏のケアとともに銀杏の落葉を腐葉土にして作物を育てるなどの活動が積極的に行われています。
 県内外・国内外を問わず、多くの方々が大銀杏に惹かれて、「それぞれ」が「それぞれ」にともに歩んでいく姿がここにあります。

浄善寺の大銀杏

幹周り 750cm(地上から40cmで計測)・930cm(地上から130cmで計測) *枝幅23.5m
樹高 約30m
樹齢 推定600年(伝承による)
所在地 島根県大田市三瓶町池田2146 浄善寺境内
交通 JR山陰本線「大田市駅」より石見交通バス「三瓶線」に乗車・「浄善寺大イチョウ前」下車・徒歩3分、
国道9号線から県道30号線(三瓶公園線)で三瓶山・西の原方面へ
著者 西原由規(浄善寺副住職、全国巨樹・巨木林の会会員)