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葛原(くずはら)の子持杉【岐阜県】

2023.7.28

 岐阜県の県都、岐阜市を流れる長良川の支流、武儀川の上流部に葛原地区があります。現在では山県市ですが、かつては美山町、昭和初期までは葛原村でした。その葛原地区にある若宮神社の本殿裏に1本の杉の巨木があります。
 傾斜地に根を広げ、上部で二又に分かれていますが根本は完全に1本です。国道からもよく目立ちますが、最初にこの木を見つけた2008年時点で枝には葉が少なく樹勢の衰えが見られる状況でした。近々枯れるのではないかと憂慮していましたが、それから15年たった今でも当時と変わらずに残っていることに生命の力強さを感じます。

葛原の子持杉。左写真が樹冠。右写真が幹

葛原の子持杉。左写真が樹冠。右写真が幹



 このような山間集落の神社にある巨木は、古くから畏敬の念を込めて残されてきていることが多いものです。驚くほどの大きさではありませんが、あまり広く知られていない巨木として秘めた魅力を持っています。
 この杉について調べてみると『山県郡志』(山県郡教育会、1918)に記述があります。「一幹を抱くを以て名く」と子持杉の名で記載されていますが、史料が古すぎるため必ずしも同定できません。ただ現在でも3mくらいの高さから分岐した支幹が残っており、当時の周囲、一丈八尺六寸(約5.6m)から確実に成長していることがわかります。

若宮神社の鳥居。石段を上った奥が本殿

若宮神社の鳥居。石段を上った奥が本殿



 葛原地区にはかつて多くの巨木があり、七色桂や篠座神社の大照現杉などの天然記念物もありました。しかし時代の流れと共にこれらの木々は失われていきましたが、今でも残っている巨木もあります。生き残ったこの杉がこれからもできるだけ長く地域のシンボルであることを切に願って止みません。
 あなたの身の回りにも、地域の方達に守られてきた木や、まだ知られていない木があるかも知れません。ぜひあなたのお気に入りの一本を見つけてみてください。

志筑の大楠たち

幹周り 614cm
樹高 40m
樹齢 不明
所在地 岐阜県山県市葛原4841-1 若宮神社
交通 東海環状自動車道 山県ICから国道256号線を北に6.4km、
美山大橋北交差点で左折、国道418号線を根尾方面へ9.5km
著者 宮川圭司(岐阜県在住、巨樹・巨木林DB登録愛好家)