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薗生(そんのう)神社のタブノキ群【千葉県】

2022.10.28

 千葉の県都・千葉市は都心にも近く一貫して人口増加を続けているまちです。郊外には豊かな樹林や田園風景が残されており、才色兼備ならぬ「街緑兼備」。一方で、市街地では開発圧が今なお強く、断片的に残った緑地は徐々に開発されつつあります。薗生(そんのう)神社のタブノキ群はそんな住宅街にひっそりと残された貴重な巨樹群なのです。

薗生神社のタブノキ群

薗生神社のタブノキ群



 薗生神社は、この一帯にあった園生村の総鎮守です。祭神は領主・千葉氏が信仰した天御中主命(あめのみなかぬしのみこと)(=妙見菩薩)で、神社周辺にはかつて「園生城」があり、村内には千葉氏の墓所「千葉山」もあるなど、千葉氏との縁が深い場所です。

巨樹に包まれる参道

巨樹に包まれる参道



 神社が面している谷津は東京湾に向かって開いていて、海水面が高かった縄文時代には、すぐ近くまで海が迫ってきていました。社叢は保存樹木として指定されたタブノキ8本を中心にケヤキ、アカガシ、スダジイからなる鬱蒼とした照葉樹の森です。付近の斜面林の多くはタブノキ林で、房総半島の沿海地に共通の照葉樹林の断片だと思われます。ただ、ここのタブノキは周辺のどの木よりも太いのです。これらの一人では抱えられないほどの巨樹が参道沿いに居並ぶさまは、一本の巨樹とはまた違った荘厳さで迫ってきます。鳥居そばの「子宝の木」と社殿左手のご神木はことに見事で、今にも何事かを語りかけてきそうな表情が樹皮に刻まれています。取材の折、台風の置き土産の風でタブノキの梢はずっと風に吹かれ「ざあああ」「ざあああ」と鳴っていました。同じ音を、古代の人々も聞いていたことでしょう。

薗生神社のタブノキ群

幹周り 327〜533cm
樹高 15〜19m
樹齢 不明
保護指定 保存樹木(千葉市)
所在地 千葉県千葉市稲毛区園生町624 薗生神社境内
交通 JR稲毛駅東口よりバス(稲11、稲41系統)に乗り、「園生小入口」バス停より、徒歩3分
著者 佐々木知幸(造園家・樹木医)