ミョウガ谷の大サワグルミ 【京都府】
2020.2.26
私たち宮津高校フィールド探究部は、京都府の丹後二市二町の巨樹調査を試みています。調査を開始して1年半、部員総出で平野部の社叢(しゃそう)林はもとより、山間廃村の寺社、尾根筋の落葉広葉樹の森、海浜の常緑樹の森など、地域の隅々まで歩き、2019年12月現在で47種1,500本を越える巨樹と出会うことができました。初めは計測だけにとどまっていた生徒たちが、出会いを重ねるたびに圧倒的な存在感に魅了され、地域の自然・歴史を語るその声に耳を傾けようと変化してきたのが嬉しいです。今回はその調査の中で出会ったミョウガ谷の大サワグルミを紹介します。

丹後半島最高峰の高山(702m)を水源とする世屋川。上世屋の美しい棚田を潤し、下世屋の龍渓を刻み、穏やかな田園風景が広がる日置の扇状地を作り、若狭湾へと流れ込みます。一帯から供給される大量の土砂は日本三景「天橋立」を形成し、豊富な栄養塩類が若狭湾の豊かな生態系を支えます。その源流域にあたるミョウガ谷は半島本来の植生を色濃く残す水源林として、丹後上世屋内山京都府自然環境保全地域に指定されています。

ここへのアクセスは標高約500mを縦走する丹後縦貫林道。その道脇から沢へと降り、藪こぎをしながら高山へと続く渓流を上ると、15分ほどで整然と等間隔に並んだサワグルミの巨樹たちが出迎えてくれます。大規模な地滑りが起こる度に、真っ先に根付き森を再生するこの木の特徴をよく示す光景です。さらに上流へ向かうこと30分。最上流部に8本の株を天へと真っ直ぐに伸ばす大サワグルミが姿を現します。沢に張り出した根が、しっかりと大地を掴んでいます。森・里・海の豊かさ、その根源たる水源の守人です。
宮津市日置から世屋川沿いを遡り水源に至るルートは、人・自然のつながりを紡ぐ水に思いを馳せる旅路です。そのクライマックス、大サワグルミとの対峙は、若者の心にそのストーリーを強く焼き付けました。
幹周り | 主幹348cm、株立ち8本の合計1,044cm |
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樹高 | 20m(目測) |
樹齢 | 不明 |
保護指定 | 丹後上世屋内山京都府自然環境保全地域 |
所在地 | 京都府宮津市上世屋(ミョウガ谷) |
交通 | 登山道や案内板等はないため、ガイドの案内が必要(宮津世屋エコツーリズムガイドの会へ問い合わせ http://miyazu-et.com) |
著者 | 多々納 智(京都府立宮津高等学校理科教諭/フィールド探究部顧問) |