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安久山(あぐやま)の大シイ

2018.12.25

安久山の大シイ



 我が家の敷地に「安久山(あぐやま)の大シイ」と呼ばれる巨木がある。樹齢は1,000年くらいと言われており、幹周り約10m。板根が大きくせり上がり四方に張り出している。スダジイでは千葉県で一番の巨木である。大シイの背後には、NHKの「日本の里山100選」にも選ばれた谷津田(やつだ)の風景が広がり、低い丘陵の間に田畑が広がる昔ながらの景色が今も残っている。

 主人に聞くところによると、「この大シイは御神木だから登ってはいけないと親に言われていたけれど、小学生のころはこっそり友だちと登っては眺めを楽しんだものだ。自分ちの梨をもいではシイの木に登り、新鮮ないい香りのするその実を食べながら裏の田んぼを眺めたのは気持ち良かったな」とか、「夏休みには両親の農作業を手伝って、涼しい大シイの木陰で父親の好きな高校野球のラジオ中継を聞きながら刈り取った稲を束ねるための縄を編んだものだ」などという、大シイとの懐かしい想い出があるそうだ。

 この大シイの根本には大きな洞があり、アニメ映画『となりのトトロ』でトトロが住む穴のようである。この洞に落ちたらトトロがいるかもしれない。いつの頃からか大シイにはフクロウが住み着き、春には可愛らしいヒナを見ることもある。夜になるとホウホホーと鳴き声が響く。まさにトトロの世界のようだ。

安久山の大シイの洞で育つ「フクちゃん」の写真

安久山の大シイの洞で育つ「フクちゃん」(2015年5月2日撮影)



 また、大シイは平山家の御神木として祭られ、木の脇には氏神様とお稲荷様の祠(ほこら)が置かれている。そして馬を祭った馬頭観音の石碑もある。祠には毎朝水をあげ、榊(さかき)を供え、日々の家内安全を祈り、手を合わせてきた。

 この氏神様は年に一度、祭礼の日があり、11月21日に朝から幟(のぼり)を立て、精進料理を造りお供えして神主様に祝詞(のりと)をあげてもらい家族みんなで拝んでいた。

 他にも大切にしてきた家の行事として、1月14日に「だんごならし」というものがあった。しんこ(上新粉)餅で俵、恵比寿様、大黒様の形のだんごを作り、それを枝に刺して飾り「なりもせ、なりもせ、元からうらまでなりもせ」と唱えながら五穀豊穣を願った。

 このような行事は最近では少なくなってしまったが、地域に残る文化とともに大シイをこれからも守っていきたいと思っている。この『となりのトトロ』のような雰囲気を皆さんにもぜひ体感してもらいたいと思う。

安久山の大シイの地図

幹周り 1,000cm
樹高 約25m
樹齢 1,000年(推定)
保護指定 市指定天然記念物
所在地 千葉県匝瑳市(そうさし)安久山197番地(平山氏宅)*平山氏のご厚意で見学が可能です。見学時は声を掛け、維持管理協力金にご協力ください。
交通 JR総武本線「八日市場駅」から2番線市内循環バス(飯高・匝瑳循環)「安久山」下車約500m。銚子連絡道「横芝光IC」から車で30分程度
著者 平山久美子