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御焼の黄泉の椎

2018.10.23

                         御焼の黄泉の椎



 活火山である三宅島は、2000年(平成12年)の噴火で島全体の6割の森林を失いました。1940年(昭和15年)からは、約20年の周期で4度の噴火を繰り返し、記録に残っているだけでも、この1,000年の間に17回もの噴火を経験しています。

 これらの噴火で、主幹が欠損し、枝は折れて枯れた巨樹、倒れて地面に突き刺さった枝から根が生えて樹勢を取り戻した巨樹、また火山灰やスコリア(気泡に富む軽い火山岩)が堆積し、ボロボロになった樹皮にツル植物であるフウトウカズラの衣をまとった巨樹もあります。その痛々しいほどに傷つきながらも、とにかく生きるのだと立ち続ける、その凄まじいばかりの生命力には、むしろ神々しささえ感じられます。

 現在、環境省の巨樹・巨木林データベースで、スダジイのなかで幹周り全国一となった「御焼(みやけ)の黄泉(よみ)の椎(しい)」もその1本。私が命名したその名前の理由ですが、「御焼」は火の島のこと。これは諸説ある三宅島の名前の由来です。「黄泉」とは当然冥土のことですが、「蘇(よみがえ)る」の語源であるということを知り、あえて「黄泉の椎」としました。つまり火山島の蘇る椎ということです。推定樹齢1,000年。その間、17回の噴火を生き抜き、何度か倒れては蘇ったであろう椎が、私には火山島に生きる島民の皆さんの姿と重なってくるのです。

 どの巨樹も幾多の伝説、ドラマがあり、観るものを魅了してやまないことでしょうが、三宅島の巨樹には、ドキュメンタリーのようなそのリアル感が、「どうだ、どっこい生きているぞ」、そんな存在感があります。

 巨樹は環境のセンサーとよく言われますが、三宅の巨樹の立ち姿は、どう考えたらよいのでしょう。皆さんの目で、心で、ぜひ体感してください。御来島をお待ちしております。

大路池の写真

原生林に囲まれた周囲約2kmの火口湖「大路池(たいろいけ)」。国の天然記念物であるアカコッコをはじめ様々な野鳥が観察できる。

東京都三宅島の地図

幹周り 1,927cm
樹高 15m
樹齢 1,000年(推定)
所在地 東京都三宅島坪田
交通 三池港から約4.5㎞、車で10分程度の場所から深山に分け入り20分
著者 佐久間文夫(東京都三宅島在住 全国巨樹・巨木林の会会員)
写真提供 三宅島観光協会