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秋田県上小阿仁村の天然秋田杉「コブ杉」

2018.8.29

秋田県上小阿仁村の天然秋田杉「コブ杉」の写真1

 「コブ杉」は、秋田県北秋田郡上小阿仁村(かみこあにむら)にある珍しい巨木です。秋田市と大館市を結ぶ国道285号沿い、上小阿仁村大林にある「コブ杉、山村広場、この先2km」等と書かれた案内看板に従って旧道に入り、集落を過ぎてしばらくすると、さらに「コブ杉」と書かれた木製の看板がある丁字路があるので右折します。

 ところどころ待避所がある狭い道を緩やかに上っていくと、砂利道との分岐にさしかかるので、案内板に従って左手に進むと駐車場に辿り着きます。

 一帯は国有林のレクリエーションの森「上大内沢(かみおおないさわ)自然観察教育林」で、トイレ、広場があります。車さえあれば交通アクセスも良く、地元の小学生をはじめ、森林環境教育の場としても活用されています。

 広場から周囲を見渡すと、やや離れたところに高齢の杉特有の丸みを帯びた梢端(しょうたん)が見て取れます。歩道を奥へ進むと景色が一変し、勇壮な天然秋田杉の巨木およそ700本が林立する群落となります。ここは1924年(大正13年)から天然林の試験地に設定され、1986年(昭和61年)まで木々の成長などの調査が続けられてきたのだとか。その後、1988年(昭和63年)に自然観察教育林に設定されて現在に至っています。

 杉の巨木林までの坂道を登り切れば、林内の傾斜は緩やか。ほどよく下層木も茂り、気持ちよく散策できます。歩みを進めると、木道に囲まれた、異彩を放つ杉が現れます。その名のとおり、ちょうど目線の辺りに大きなコブを持つ天然秋田杉「コブ杉」です。

秋田県上小阿仁村の天然秋田杉「コブ杉」の写真2

 太さ(コブではない部分)は1.2m、幹回りは3.77m、樹高は40m。コブの部分は縦横それぞれ2mくらいです。樹齢は200~300年と推定されています。2000年(平成12年)には、林野庁が全国各地の国有林内に生育する巨樹から選定した「森の巨人たち100選」に選ばれました。

 「コブ杉」は、周囲の天然秋田杉に比べてさほど大きいわけではありませんが、その独特な風貌からひと際存在感があります。昔から御神木として崇められ、地元住民にとって特別な木であったようです。

 このほか、付近で天然秋田杉の巨木が見られるスポットとしては、能代市二ツ井町田代にある「仁鮒水沢(にぶなみずさわ)スギ植物群落保護林」もあります。天然秋田杉の巨木めぐりを楽しんではいかがでしょうか。

 ※筆者は現在林野庁に勤務しており、職務上「全国巨樹・巨木林の会」に関わった縁で本サイトのコラムに寄稿させていただきました。筆者が以前東北森林管理局米代東部森林管理署上小阿仁支署の元支署長として勤務した経験から同支署管内の巨木をご紹介しましたが、本稿は所属機関には関係なく、個人としての見解を含めた紹介文であることをお断りさせていただきます。

秋田県上小阿仁村の地図

幹周り 3m77cm
樹高 40m
樹齢 200~300年
所在地 秋田県北秋田郡上小阿仁村大林
交通 国道285号「コブ杉」案内板から旧道を通って駐車場まで車で約10分。 駐車場からは遊歩道を徒歩で約15分
著者 佐藤智一(神奈川県在住、林野庁職員)