• 文字サイズ
    を変更する

湯蓋の森・衣掛の森

2018.1

湯蓋の森の写真

 西日本、とりわけ福岡県にはクスノキの巨木が数多く見受けられます。福岡市からみて東南東に位置する糟屋郡宇美町の宇美八幡宮の境内には、神功(じんぐう)皇后伝説にゆかりのある巨木で国指定天然記念物のクスノキが2本存在します。社殿広場前にあるのが、「湯蓋(ゆぶた)の森」と呼ばれているクスノキで、幹周り1500cm、四方に枝を大きく広げて、若々しく樹勢は旺盛です。神社を訪れた人は、参拝の前にまず、この樹の迫力に圧倒されて足を止めています。神功皇后が三韓遠征後、この地で応神天皇を出産し、この樹の下で産湯を使ったということから「湯蓋の森」と呼ばれています。また、「宇美(ウミ)」という地名も「産み」にちなんで名付けられたとも言われています。

衣掛の森の写真

 一方、社殿奥の裏手にあるのが、「衣掛(きぬかけ)の森」と呼ばれているクスノキで、幹周り20m。応神天皇の産湯を使う際、衣をこの樹に掛けたといわれています。幹は上部が欠損し、表面には荒々しく大きな空洞が生じ、枝葉には以前のような勢いは感じられません。すでに全盛期を終えた印象を受け、これ以上の回復は難しいかもしれません。しかし風雪に耐え、2000年の歴史をもつといわれる迫力に満ちたクスノキの巨木です。見た瞬間、「ウーン」と誰もが溜息をつくことでしょう。2本共、神社の御神木として、安産・子宝を願う人たちが毎日訪れて、祈願をしています。パワースポットとしても注目され、宇美町のシンボルにもなっています。境内には他にも30本近いクスノキがあり、社叢全体が県指定天然記念物となっています。それは正に樟(くす)神社と言いたくなるほど。ぜひ訪れて見てください。

宇美八幡宮の地図

幹周り湯蓋の森:1500cm
衣掛の森:2000cm
樹高湯蓋の森:30m
衣掛の森:20m
樹齢湯蓋の森:1000年以上(推定)
衣掛の森:2000年(推定)
保護指定湯蓋の森:国指定天然記念物
衣掛の森:国指定天然記念物
所在地福岡県粕屋郡宇美町宇美1-1-1 宇美八幡宮内
交通JR宇美駅より徒歩5分。九州高速道路太宰府ICより車で15分
著者山本廣明(福岡県在住 全国巨樹・巨木林の会会員)