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杉沢の大スギ

2017.5

杉沢の大スギの写真1

 全国に数多いスギの中でも、その端正な樹形と旺盛な樹勢は他に類を見ないスギです。このスギのために周囲が公園として整備されており、保護対策も手抜かりはありません。周囲に遮る物が何もなく完全な独立木として立っており、どこから眺めても破綻しない優美な姿は、全国に数多いスギの巨樹の中で日本一と断言してしまっても良いかもしれません。目立った損傷もほとんどなく、空洞の開口も現在は見られません。昭和初期の頃は小さな空洞が西側に開いており、子どもの格好の遊び場所だったそうですが、現在では旺盛な成長力によって、それも閉じられてしまったようです。データベースに登録されてから約30年が経過しようとしていますが、昨年の計測では幹周1330cmを記録しています。

杉沢の大スギの写真2

 奇跡的に落雷の被害も受けたことがないとされる本樹。『天然記念物事典』(文化庁文化財保護部著 第一法規出版株式会社 昭和46年発行)においては、日本で最も背の高いスギの一本とされたこともありました。これだけの樹高を持つ独立木が、雷の被害も受けずに立っていること自体、まさに奇跡に近いことなのかもしれません。太平洋側に近い地に成長しているこのスギのルーツは、日本海側のウラスギにあると言われています。その影響なのか地上10数メートル部分より主幹が数株に分かれ、それによって樹形に幅がもたらされ、端正な樹形をさらに重厚なものへと見せています。通常見られるスギの枝振りとは比較にならないほどの雄大さに、見惚れてしまうこと間違いなしです。私は常日頃、巨樹巡りを始めた方には、まず最初にこの大スギを見ることを勧めています。巨樹の持つ魅力を、すべて凝縮させた一本が杉沢の大杉と言えるからなのです。

杉沢の大スギの地図

幹周り1280cm
樹高45m
樹齢300年以上
保護指定国指定天然記念物
所在地福島県二本松市杉沢字平
交通JR二本松駅からバス「杉沢大杉」下車徒歩5分
著者高橋 弘(巨樹カメラマン 全国巨樹・巨木林の会会員)