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犬山市のヒトツバタゴ自生地の巨木

2017.4

犬山市のヒトツバタゴ自生地の写真1

 ヒトツバタゴ自生地は、農業用の人工ため池では日本で2番目と言われる貯水量を蓄える「入鹿池」に近い、池野という地名の湿地内にあります。国指定の天然記念物ですから、ご存知の方も多いと思いますが、道路から本宮山の山裾に入った洞に生えているため、近くに寄らないと目立ちません。以前枯死した個体の年輪を数えたところ、およそ480年でした。

犬山市のヒトツバタゴ自生地の写真2

 現在は、樹齢400年に達する巨樹を含む6本の大きな個体と、1本の若木が目立つ存在ですが、現地での実生更新個体が10本ほど元気に育ちつつあります。これらは、まだ10年にもなりませんが、実生個体の更新を現地で見られるのは珍しく、巨樹・巨木の「いのちのバトン」がどのように受け継がれていくのかを観察するには、絶好の対象かと思います。このヒトツバタゴは、土地所有者を含む地元の方によって大切にされてきました。自生地に隣接する農地は、耕作されなくなってから犬山市が取得し、自生地保護区内を含め、草刈りなどの管理をNPO法人犬山里山学研究所に委託して、植生や景観保全に留意しています。例年5月の連休1週間後くらいに開花し、まるで雪を頂いたかのような花姿が訪れる人を魅了します。木が大きい、樹齢が高い、というのも樹木の魅力の重要な要素ですが、バランスを保つ樹形と、季節の訪れを告げる「花暦樹」の要素も、巨樹・巨木を愛する人々を引きつけてやまない素質かと思います。
・例年5月の連休後くらいに開花。10日間ほど見頃が続く

犬山市のヒトツバタゴ自生地の地図

保護指定国指定天然記念物(ヒトツバタゴ自生地)
所在地愛知県犬山市池野西洞
交通JR犬山駅からバス「入鹿湖乗船場」下車徒歩10分、もしくは「明治村」下車徒歩20分
著者林 進(愛知県在住 全国巨樹・巨木林の会理事 岐阜大学名誉教授)