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  • 千鳥・ノブさん(芸人)

    うちの庭には天然記念物がある

    千鳥・ノブさん(芸人)
    2018.9.28

早川のカヤ
          早川のカヤ

「ボクんちの氏神様」

 もしかしたら、ボク、知らず知らずのうちに巨樹にご縁があるのかもしれません。うちの実家の庭には「早川のカヤ」という天然記念物の巨樹がありまして。『有吉くんの正直さんぽ』という番組で、千葉県の本八幡にある国指定特別天然記念物の「千本公孫樹(せんぼんいちょう)」のロケに行ったときに、ふと自分のうちのカヤを思い出して、「そういえばうちにこんな大きな天然記念物のカヤの木があって・・・」という話になった。その話がきっかけで、「ノブは、家に天然記念物のある大金持ちやった」という話になり(笑)。そのカヤの名前に「早川」という名字がついていたので本名まで知れ渡ってしまいました。

 ボクは高校を卒業するまで岡山県の井原市にいたのですが、家のあるあたりは、ほんとめちゃくちゃ田舎でして、そんな環境で育ったので、子どものころは天然記念物といわれても家の前に生えているただの木だと思っていました。母屋の前に小川があるんですけど、その縁にこのカヤが生えていて、水が十分にあるからでしょうね、根を小川の方に伸ばして、いつも青々としていた印象があります。

 このカヤは氏神様というんですか・・・実家のまわりには何十軒も早川という姓の家があるんですけど、この早川という名字の人たちを守ってくれている神様だそうです。今思うと、オヤジとオカンが大事にお祀りしていました。子どもの頃、カヤの木の上に『ゲゲゲの鬼太郎』のゲゲゲハウスみたいに秘密基地をつくって、中でお菓子を食べたら楽しいだろうな、と友達とカヤに登ったら、親に「あかん!」とえらい怒られまして。ああ、そうか。そんなに大事な木なんや。とそのとき気が付いたんです。畑仕事の合間によく、おじいちゃん、おばあちゃんがカヤの木陰で涼みながら一休みしていたのがカヤのなつかしい光景ですね。

 ボクは、高校生のときからお笑いは好きやったし、やってもみたくもあったんですが、まあ無理やろうな、と思って卒業と同時に就職したんです。高校の同級生だった相方の大悟は、芸人になると言ってひとり大阪に出ていて、たまにボクら大悟の様子を見に行ったりしてたんです。そしたら田舎育ちのボクにとっては大阪が楽しすぎて!それで20歳のときに辞表を出して、大阪に出ました。今、思うとよく思い切ったなと思います。

 今は東京で暮らしていて、街は華やかで、最高に住みやすいですが、やっぱり緑があるところが好きですね。意外と東京にも緑があるんですよ。目黒にある美術館の緑地が好きで、よく家族で訪れたりもしています。東京で育った5歳と7歳のふたりの子どもたちも意外にも田舎が好きで、「おじいちゃんち、行きたーい!」って言うんです。おじいちゃんのところへ泊まるとむちゃくちゃ楽しいみたいで。広くて自由に動き回れるし、カブトムシもホタルもいますから。

 そう思うと、ボクらは潜在的に自然、そして巨樹が好きで。都会の人も、芸能人も、きっとそういう人は多いんじゃないかな。屋久杉とか、有名な京都の八坂神社のでっかいサクラとか、あんなに人が集まるんですから。

 ありがたいことに、ボクたちはロケが多いので日本各地に行かせてもらって自然を満喫することも多いんです。『世界の村のどエライさん』という番組で、日本で最も人口が少ない町を取材するということで、山梨県早川町を訪れたのですが、あそこはめちゃめちゃすごかった。炎天下のロケだったんですが、マイナスイオンがすごすぎるからか、まったく疲れないんです。町に1軒しかない寿司屋のご主人は、癌を宣告されて築地から早川町に越してきたら、癌が治ったとか、よそのお宅のお父さんも病気が奇跡的に完治したとか、すごい話がどんどん出てくる。自然のパワーってすごいですよ。

 パワースポットというと軽いですが、霊験あらたかなところにお参りに行こうということで、4年ほど前に埼玉県秩父市の三峯神社に行きました。大きな御神木が本殿の前に2本あって、その御神木に触ったり、抱きついたりするとご利益があるらしいと。仲の良い三四郎・小宮と後輩のシンプル・西野と3人で「人気が出ますように!」とお参りしたところ、帰り道でまず小宮に『オールナイトニッポン』のレギュラーが決まったとメールが来て、ご利益あって良かったと言い合っていたら、ボクのところへもメールが来て『ゴッドタン』に出演が決まりました、と。よっしゃー!と盛り上がって出演内容を見ると、ノブ軍団で出演ということで、西野も一緒に出ることになってたんです。それ以来、毎年の初詣はもちろん三峯神社です。東京から3時間もかかるんですけど、嫁と子どもを連れてお参りに行っています。

 しかし、先日の西日本豪雨は焦りました。実家の前の川が氾濫して、土砂崩れも心配だったのでオヤジとオカンに「すぐ避難して!」と連絡しました。幸い、実家もカヤも大丈夫でしたが、被災された皆様にはお見舞い申し上げます。あの豪雨の後、1日だけ休みをとって実家の様子を見に行き、先祖の墓参りをしてきました。思えば、あの巨樹もボクの祖先みたいなものですね。若い頃は墓参りをしなくても心のなかで「ありがと、じいちゃん」とお祈りすればいいやろ、と思っていたのですが、今は自分の足でお参りすることが大事かなと。もしかしたら、巨樹も自分の足で観に行くことが大事なのかもしれません。仕事や家族旅行で行った先でも、巨樹がないか気にして見てみるようにしようと思います。ほんとボクは巨樹にご縁がありますね。巨樹芸人として巨樹で『アメトーーク!*』を、ぜひ提案したいです(笑)

(*ある特定の人物・事柄に内容に関する芸人が集まり、それについて紹介やトークをする人気番組)