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  • 中越典子さん(女優)

    会いに行かなきゃ! 思いが募る大きな木

    中越典子さん(女優)
    2017.12.18

クスノキ

「木登りが私の贅沢」

 私の出身地、佐賀県は県樹がクスノキなんです。そのせいか町のあちこちにクスノキがあって、幼い頃から慣れ親しんでいる大好きな木です。佐賀県の天然記念物に指定されている県立図書館入り口の大きなクスは、樹齢が300年以上もあり、それはそれは見事な木です。お堀に張り出した太い幹が水面に届きそうな勢いで、まるでジャンプ台のように思えて、見るたびに登りたくなってしまうんですよね。また、実家からちょっと足を延ばした富士町下合瀬の大カツラは全国第2位で、幹周りが14mもあるんです。以前、年の始まりのインスタグラムで、このカツラの木をアップしました。

 でも、私のいちばんのお気に入りは、実家の近くにある小さな神社のクスノキ。ほんとに小さな神社ですけど、お祭りでは夜店が出たりして、子どもの頃から父に連れられてよく行った馴染み深い場所です。お祭りじゃなくても、鳥居に石をのせたり、クスノキに登ったり……この神社の境内は子どもたちの遊びの場でもあったのです。今でも帰省すると、息子を連れて行くんですよ。木を見ると登りたくなる習性なので。(笑)息子も木に登らせちゃうんです。私の子どもの頃の経験を息子にも伝えてやりたいというか(この年になっても登っちゃうんですけど)、豊かな感性を持ってほしいと思っています。

 クスノキはなによりも幹がゴツゴツしていて、グネグネしていて、力強さ・生命力を感じます。なんだか光に向かって伸びていくようなイメージがあって、その全てが大好きです。登りやすいし、まるで自然の遊具のよう。木に登るというのが、私の中で最高の贅沢になるんです。

「木の幹と迷彩柄」

天然記念物のクス

 田舎から東京に出てきた当初、都会が楽しくてしょうがなかったのですけど、数年が経つと、なにかが足りないと思うようになってきました。その頃だったでしょうか、もともと迷彩柄が好きで、自分の描く絵などにもよく参考にしていたのですが、街路樹や公園の木を何気なく見たときに、ふと気づいたんです。木の幹も迷彩柄なんだ、と。 それからというもの、カメラを持って出かけてはいろんな木の幹を撮り、それをカラーコピーして部屋の壁に貼ったりしているうちに、天井までいっぱいになってしまって。それを見て、うっとりする自分って、今で言うと「萌エ〜」ってカンジだったんですね。気持ちが落ち着き、ほっと安心できる、私だけの空間。あの頃は慣れない都会の生活に疲れて、自然のものに飢えていたのだと思います。

 またあるとき、私はヤナギの木に勇気をもらったこともあります。悩んでいたとき、ふと窓の外を見たら、ヤナギが風に揺れていたんです。それはごくありふれた風景で、きっと元気なときにはなんとも思わなかったのかもしれません。でも、そのときの私は、そのヤナギの風にしなう美しさに心を打たれて、はっとしました。

 どんな風にもしなやかになびくヤナギ。ともすれば凝り固まりがちな私の心に、「どんなことにも流されたっていいじゃん、もっと柔軟に気軽に生きようよ」というメッセージをもらったような気がしたのです。以後、私の好きな木にヤナギも仲間入りしました。なんたって私のカウンセラーなんですから。

ジャイアントセコイア

「地球最大の生命体・ジャイアントセコイアに会う」

 私の夢は3つあります。1つは世界で一番大きい木を見ること。2つめは、世界で一番幹周りが大きい木、そして3つめは世界でもっとも古い木を見ることです。この3つは、おばあちゃんになっても絶対に叶えたい夢なんですが、このうちの1つ、大きい木は一昨年の5月に会うことが叶いました。

 その木はアメリカ・カリフォルニア州のセコイア国立公園にあるジャイアントセコイアで、体積で比べると地球上でもっとも巨大な木なんです。現時点で、地球最大の生命体といえるわけで、その存在感といったら! 推定樹齢は軽く2000年を超えているらしく、その気の遠くなるような年月を、この木は生きてきて、いま私の目の前に存在している!そう考えると、壮大なスケールと強靭なパワーに圧倒されてしまいます。同時に、包み込まれるような大きな安心感も得られて、深い感動を覚えました。

アメリカのサボテン

 そういえば、アメリカでジュシュア・ツリーに会いに行く途中、大きなサボテンを見かけました。嬉しくなって車を止めて近づいたとき、突然、頭の上から、ふぁんと毒が抜け出たような気がしたんです。その時からもしかしたら、私にとってサボテンはデトックスパワーがあるのかも!と思いました。

 ちなみに、「木の精占い」ていうのがあるんですが、それによると、私はリンゴの妖精がついているらしいです。だからなのか、ときどき木の周りで妖精が舞っているようにキラキラと輝いて見えるなんてことも。(笑)  私にとって木とは、単なる樹木ではなくて「命通う木」であり、心と心を通わせることができる特別な関係にあると思えるんです。