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東根の大ケヤキ【山形県】

2020.9.25

 本町通りから「東根の大ケヤキ」の案内板に従って横道に入ると、南北朝時代に築城された小田島城(東根城)に通じる大手坂が前方に広がる。その坂に沿って復元された城壁を眺めながら歩みを進めると本丸跡に建つ東根小学校が見えてくる。城壁の中に小学校があるのも驚きだが、目を奪われるのは、三階建ての校舎を覆うようにそびえ立つ巨樹である。これが、国の特別天然記念物に指定されている「東根の大ケヤキ」である。

東根の大ケヤキ_11月

11月の大ケヤキ。紅葉が夕日に照らされ美しい。



 「東根の大ケヤキ」は、「わが学び舎の守りとて その名も高き大欅」と同校の校歌にもうたわれており、明治7年の創立以来ずっと子供たちを見守り続けている。東根小の子供の一日は、玄関前に鎮座する大ケヤキへの朝の挨拶から始まり、一日の終わりもまた大ケヤキへの挨拶で終わる。大ケヤキの大きく揺るがぬその姿は、子供たちの誇りであり、理想でもある。同校の子供たちが、昔から「けやきっ子」と呼ばれているのも、日本一の大ケヤキに負けない心も体もたくましい凛とした子どもであってほしいという願いが込められているからである。

 「地面に落ちる前に大ケヤキの葉を3枚キャッチすると願いがかなうんだよ。」
 大ケヤキにまつわる言い伝えが、今でも子供たちにしっかりと受け継がれている。11月の落葉の季節には、風に舞う落ち葉を追い駆け回る「けやきっ子」の姿を1日中見ることができる。
 かつては、自由に大ケヤキの幹に触れたり、根元の空洞を通り抜けたりすることができたと言うが、残念ながら現在は根元の周囲を柵で囲い、立ち入り禁止になっている。それでも、祖父の代から孫の代まで東根小の子供たちはずっと「けやきっ子」であり、その深いかかわりは昔も今も変わることはない。

東根の大ケヤキ_5月

5月の大ケヤキ。左奥に校舎、右手に子供たちが奉納した「横綱」が見える。



 毎年4月29日(昭和の日)に、東根小の6年生が大ケヤキに巨大なしめ縄「横綱」を奉納する行事がある。「全国けやき番付」※の東の横綱にふさわしい重さ300kgを超える巨大な綱(つな)である。これは、彼等が5年生の時に、田植え、稲刈りをして手に入れた藁を地域の方々と共に編んで制作したものである。6年生になって、その綱を山車に乗せ、子供たちが引いて市内を練り歩き、大ケヤキ前の台座に奉納する。7月の終わり頃まで飾っているので併せてご覧いただきたい。

※里見信生「日本欅見立番附」(1980年(昭和55年)発表)

東根の大ケヤキの地図

幹周り 約1,600cm
樹高 約28m
樹齢 推定1,500年以上
保護指定 国指定特別天然記念物 (昭和32年9月11日指定)
所在地 山形県東根市本丸南一丁目1番1号 東根市立東根小学校校庭
交通 JR東日本 さくらんぼ東根駅より徒歩20分
著者 長瀬 広幸(東根市立東根小学校長)