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東京都最西端にたたずむ巨樹「雲取山大ダワのイチイ」

2019.8.27

 「最も巨樹が多い都道府県」はどこでしょうか。じつはこの答え、東京都なのです。そのなかでも特に巨樹の本数が多い場所は、奥多摩ビジターセンターのある奥多摩町です。「東京都=大都会」というイメージが浸透しているからか、奥多摩町も東京都であることを伝えると「ここも東京なの!?」と驚かれる方もいます。東京都の西端、埼玉県や山梨県との県境に位置する奥多摩町は、町全域が秩父多摩甲斐国立公園内にあり、亜高山帯ならではのコメツガやシラビソをはじめ、低山帯でのスギ・ヒノキの植林地やコナラ・クリの落葉広葉樹林に至るまで、多くの樹種を観察することができます。町内には、平成30年7月現在で1,013本もの巨樹が確認されており、日本全国の市区町村で東京都三宅島村に次ぐ2番目に多くの巨樹があります。

雲取山大ダワのイチイの写真

雲取山大ダワのイチイ



 町内にある巨樹のなかで私にとって一番印象深い巨樹は、「雲取山(くもとりやま)大(おお)ダワのイチイ」です。雲取山の山頂から北側に向かった「大ダワ」と呼ばれる場所の近くにあり、幹周450cm、樹高18m、推定樹齢600年の巨樹です。イチイはもともと、寒冷地を好む樹木です。関東など暖かい地域では成長が悪いのですが、イチイが立つ大ダワは標高約1,750mの亜高山帯に含まれるため年間を通じて冷涼な環境となります。成長に適した場所でゆっくり大きくなり、巨樹と呼ばれるまでに成長することができたのでしょう。近年では、ニホンジカの樹皮剥ぎ防護ネットが巻かれ保護されていますが、樹勢の衰えは見受けられず活き活きと枝を伸ばしています。

山中でひときわ太い幹の雲取山大ダワのイチイの写真

山中でひときわ太い幹の雲取山大ダワのイチイ



 私がこの巨樹と出会ったのは奥多摩で働き始めて1年目の秋、1泊2日の雲取山実踏調査の2日目でした。雲取山荘を出発し、鳥のさえずりの中を下山中、ひときわ太い幹に目を奪われたことが今も記憶に残っています。それから同地を通る度に、堂々たるその姿を見ると「力強く根を張り頑張りなさい。」と励まされているような気持ちになります。雲取山登山で近くを通る機会があれば、ぜひご覧いただきたい巨樹です。このほかにも、町内には「氷川(ひかわ)の三本スギ」や「古里附(こりつき)のイヌグス」など人里近くで見られる巨樹もあります。堂々と静かにたたずむ巨樹を訪ねて、奥多摩を散策してはいかがでしょうか。

雲取山大ダワのイチイの地図

幹周り 450cm
樹高 18m
樹齢 600年(推定)
所在地 東京都奥多摩町雲取山大ダワ
交通 大ダワまで行くには山小屋に一泊する必要あり。詳しい情報は奥多摩ビジターセンターまで。(東京都西多摩郡奥多摩町氷川171-1  TEL:0428-83-2037)
著者 大野 真(奥多摩ビジターセンター)