鶴嶺八幡の大イチョウ
2016.12

イチョウとしては神奈川県内で最大、全種でも県内5位に数えられる巨樹で、県の天然記念物にも指定されていますが、鶴嶺八幡宮とともに一般にはあまり知られていないようです。鶴嶺八幡宮は、源頼義が長元三(1030)年に京都の石清水八幡宮を勧請して懐島郷矢畑に創建した懐島八幡宮がその元で、頼義の子の八幡太郎義家が、後三年の役の戦勝祈願と勝利により、懐島八幡宮を現在地の浜之郷に遷したのが鶴嶺八幡宮といわれています。

安藤広重の東海道五十三次絵図の「南湖の左富士」で有名な国道1号線の鳥井戸橋近くには、鶴嶺神社の大鳥居があります。そこから約800mも続く参道の松並木「八丁松並木」も、茅ヶ崎市の天然記念物に指定されています。社殿敷へ上る石段の右手に屹立する大イチョウは、源義家が鶴嶺八幡宮を現在地に遷座したときに植えたと伝えられますから、樹齢は約950年にもなります。根元の少し上からいくつかの幹に分かれ、千年近い樹齢にも関わらず、旺盛な枝ぶりで、根元にはひこばえもたくさん出ています。また、それぞれの枝からは、多くの乳根が垂れ下がっています
県内最大のイチョウでもあり、県天然記念物に指定されているとともに、かながわ名木100選にも選定されています。境内には、源頼義が前九年の役の戦勝祈願を込めて手植えしたという樹齢900年のマキの枯損木も、御神木として保存されています。枯損前の巨樹の雄姿を見ることができないのが残念です。悠久の歴史の流れの中で、ひっそりと地域に根付く巨樹を訪ねてみてはいかがでしょうか。

幹周り | 919cm |
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樹高 | 29m |
樹齢 | 950年 |
保護指定 | 神奈川県指定天然記念物・かながわ名木100選 |
所在地 | 神奈川県茅ケ崎市浜之郷462 鶴嶺八幡宮境内 |
交通 | JR茅ヶ崎駅からバス「鶴嶺小学校前」下車徒歩2分。拝殿に向かって右側に立っている。 |
著者 | 高橋 進(神奈川県在住 全国巨樹・巨木林の会会長 共栄大学特任教授) |