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日光で巨樹めぐりのショートトリップ
栃木県(日光国立公園)
2日間(1泊2日)
日光国立公園は、昭和9(1934)年に指定された、日本で最初の国立公園の一つです。栃木県を中心に、群馬県や福島県にもまたがる広大な国立公園で、中禅寺湖や華厳滝などの雄大な自然景観が楽しめるほか、東照宮などの神社仏閣や史跡も点在し、北関東有数の観光地となっています。
日光国立公園のうち、いろは坂より上の地域は「奥日光」と呼ばれており、公園内でもとくに自然が豊かな地域です。日光で巨樹といえば、日光街道のスギ並木や日光東照宮のスギが有名ですが、奥日光では自然のままの巨樹に出会えます。奥日光の西ノ湖や中禅寺湖の千手ヶ浜は一般車両の通行が禁じられているエリアにあり、巨樹を訪れるためには低公害バスや遊覧船に乗り、さらに徒歩で進まなくてはなりません。出会うためには一手間必要ですが、車社会の喧噪から離れた湖畔の静寂のなかで眺める巨樹は格別です。
今回は、いろは坂の下(日光)といろは坂の上(奥日光)で、環境省レンジャーもオススメの隠れた巨樹を巡る1泊2日のコースを紹介します。
【アクセス】
・車:日光宇都宮道路「日光IC」からスポット1「太郎モミ」まで約20分
・電車:「東武日光駅」まで「浅草駅(東京)」から東武日光線(特急けごん)で約1時間50分、「新宿駅(東京)」から宇都宮線・東武日光線(特急日光)で約2時間
※駅前にレンタカーあり。

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・幹周り600cm
・樹 高30m
・樹 齢350年(推定)
・保護指定日光市指定天然記念物
森の巨人たち100選(林野庁)
・所在地栃木県日光市所野
緯度:36度45分42.39秒
経度:139度36分33.17秒
スポット1
太郎モミ
日光市街
すっくと立つ元気な1本
JR日光駅および東武日光駅から約4km、「日光霧降スケートセンター」の第2駐車場の脇に立つ大きなモミです。周囲が開けているので、近くに寄ると実際の樹高よりもかなり大きく見えます。足元を見ると、黒い小さな糞がそこここに。この辺りは、日が暮れると野生のシカがやってくるようで、太郎モミにも、シカに樹皮を食べられないように幹周りに黒いネットがぐるりと巻かれています。そのおかげか太郎モミはシカの被害を受けることなく元気に真っ直ぐ伸び、まわりの木々が紅葉するなか常緑の尖った葉を青々と繁らせていました。
モミまでは第2駐車場がいちばん近いのですが、この駐車場は基本的には閉鎖されています。必ず第1駐車場に車をとめて歩道を通ってモミまで行ってください。
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スポット2
花石神社のスギとケヤキ
日光市街
◆スギ(上)
・幹周り560cm
・樹 高19m
・樹 齢600年(推定)
・保護指定日光市指定天然記念物
◆ケヤキ(下)
・幹周り770cm
・樹 高13m
・樹 齢800年(推定)
・保護指定日光市指定天然記念物
・所在地栃木県日光市花石町1954
緯度:36度45分08.59秒
経度:139度35分13.70秒
静寂のなかで眺める2本の天然記念物
どちらも市指定の天然記念物であり、一見の価値があります。専用の駐車場がないためちょっと不便ですが、その分訪れる人も少なく静かに巨樹を堪能することができます。いちばん近い日光田母沢御用邸記念公園の駐車場に車を止めて、国道120号線の歩道をいろは坂方面に500mほど歩いた右手側の、見落としそうなほど細い参道の奥に朱塗りが美しい小さい社殿が見えます。
このスギは、日光の有名な神社仏閣にあるスギの巨樹たちと比べると小ぶりではありますが、御神木として地域の人々を守ってきた風格に満ちています。
また、参道にあるケヤキは、大枝をすべて失った瘤だらけの姿ではありますが、苔むした姿には神聖な存在感が漂います。
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スポット3
日光湯元温泉のカツラ
日光湯元温泉
カツラとビジターセンター
中禅寺湖畔の街を通り抜け、日光湯元温泉までやって来るとのんびりとした気分になります。湯元の周辺は気持ちのよい散歩道があり、またあちらこちらに巨樹が見られます。
カツラは水辺を好む樹木で、大木になると株立ちになることが多く、ハート型の葉っぱが特徴です。このカツラは樹形がとても美しく、広がった枝が重なって繊細なレース編みのよう。新緑の緑色と紅葉の黄色はとくに素晴らしく、落葉した葉っぱからはキャラメルや醤油のような甘い香りがします。
このカツラの横にある日光湯元ビジターセンターでは、周辺の自然や歴史・文化の紹介を解説パネルや案内板で展示しており、季節ごとに自然観察やハイキングなどのイベントなどを行っているので覗いてみてください。
※日光湯元で1泊し、翌日は朝早く出発するのがおすすめです。
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スポット4
千手楢
西ノ湖周辺
「千手観音を彷彿とさせるミズナラ」
西ノ湖の北岸には、多くの太い枝を張りだしたミズナラの巨木があります。赤沼駐車場に車を止めて低公害バスに乗換え、西ノ湖入口で下車して、大きなミズナラやハルニレがそこかしこに育つ様子を眺めながら平坦な遊歩道を歩くと、西ノ湖の湖畔にでます。左に折れ、岸辺を歩くことおよそ100m、燭台(しょくだい)を思わせる異形な樹形が目に入ってきます。
このミズナラは、遠くから見ると千手観音の手のように枝を張り出しているので「千手楢(せんじゅなら)」と呼ぶ方もいます。この巨体を支えるために、根が大きく盛り上がり、まるで熱帯雨林の樹木にみられる板根のようにしっかりと踏ん張っています。静かな西ノ湖の湖畔の雰囲気とあいまって、まさに観音様のような神々しさです。
※千手ヶ浜まではコース途中にトイレがありません。赤沼駐車場でお済ませください。
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スポット5
ハルニレ
中禅寺湖周辺
「ひろびろとした湖面の中禅寺湖のハルニレ」
千手楢から「千手の森遊歩道」を千手ヶ浜方面に歩いて1時間30分ほど。整備された平坦な道をいくと中禅寺湖の西側にある千手ヶ浜に辿りつきます。千手ヶ浜は、中禅寺湖西側のいちばん奥まったところに弓のように広がる長さ約1kmほどの砂浜で、中禅寺湖をクルージングする遊覧船(季節運行)の桟橋があります。桟橋から中禅寺湖のむこうに広がる男体山の雄大な景色を眺め、ふり返ると大きなハルニレが立っています。名前こそ付いていませんが、巨樹・巨木林データベースに登録されたハルニレのなかでもナンバー10に入る太さ。
浜にはちょうど椅子になる流木がたくさんあるので、腰掛けて、ハルニレや中禅寺湖の風景をのんびり眺めながら休憩することもできます。ちなみに、千手ヶ浜にはクリンソウという奥日光を代表する植物の群生地があり、5月下旬から7月上旬の花の時期にはたいへんな賑わいとなります。
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コース周辺の見どころ
奥日光
自然と共生する観光地 ~低公害バスについて~
小田代原、西ノ湖、千手ヶ浜へ至る道路は、環境保全のため、平成5(1993)年よりマイカー規制され、代わりに低公害バスが運行されています。全長約10kmの車窓からは、奥日光の森の景色をゆったりと眺め、小鳥の声や木の葉のさざめきに耳を傾けることができます。運が良ければニホンジカやニホンザル、ツキノワグマなどを見ることができるかもしれません。歩いていると人の気配を感じて逃げてしまうことが多いのですが、音が静かで排気ガスも少ない低公害バスには警戒心が薄れるのかもしれません。
ただし運行は例年4月から11月まで。本数も少ないので、最終バスに乗り遅れてしまわないようご注意ください。
※低公害バスの運行についての詳細は「日光自然博物館」HPよりご確認ください。
https://www.nikko-nsm.co.jp/