• 文字サイズ
    を変更する

屋久島の巨木「中洲杉」【鹿児島県】

2022.2.28

 屋久島には、昔から木こりたちが言い伝えてきた超巨大杉伝説があった。私たち取材チームは縄文杉をこえる超巨大杉を探すべく(*)、屋久島全域を撮影したレーザーのデータを利用した画像解析と空中写真を突き合わせて比較的大きな林冠を持つ樹木を選定し、それを現地で確認するという方法を採用した。

樹高35mの中洲杉

樹高35mの中洲杉



 2017 年からの現地調査では、データ解析で確認された大きな林冠木のうち風当たりの強い尾根沿いや洪水・土石流がしばしば発生する渓流沿いを除いて捜索を行なった。しかし、巨大杉は意外なことに渓流の中洲で確認された。
 「中洲杉」と名付けられた杉は、樹高35m、胸高周囲長10.4mと、これまでに確認された屋久杉の中でもベスト10に入る。樹高は25.3mの縄文杉を遥かに超えていた。
 樹木の中程からは大きく二つに分かれており、ヤマグルマなどの樹木が幹に着生している。「中洲杉」はサイズは大きいものの、多くの屋久杉と同様に幹の内部はほとんど腐朽しており、上空が透けて見え、上部に着生している落葉広葉樹の葉も確認できた。樹木の生きている部分は、幹の外側の樹皮に近い形成層なので、内部が腐朽しても生存には影響しない。幹の内部が空洞でドーナツ状になっているので、ある程度の物理的強度も保たれていると考えられる。

幹の内部から上空が透けて見える

幹の内部から上空が透けて見える



 渓流周辺は土石流の可能性は高いが、一旦、山腹崩壊や土石流が生じると、巨石を発生させ、数千年に渡って安定し続ける。また、屋久島は毎年、大きな台風が襲来するが、渓流周辺は尾根と比べると比較的風当たりが弱いために巨木が生存することができるのかもしれない。調査の過程で、ウイルソン株に匹敵するような切り株も見つかった。過去には、とてつもない巨木林が存在していたことは間違いない。

屋久島の巨木「中洲杉」

幹周り 1,040cm
樹高 35m
樹齢 不明
所在地 鹿児島県熊毛郡屋久島町*遭難や事故を避けるため詳しい場所は非公開
著者 崎尾均(Botanical Academy 代表,新潟大学名誉教授)
*補足 崎尾氏は『伝説の超巨大杉を探す』というNHK テレビ番組のなかで、
「縄文杉を超える巨大杉を見つける」というミッションを受けて屋久島の探索に参加した。