松保の大スギ【山形県】
2020.7.28
山形県の中央に位置し、全域が山林に覆われた大江町。車の通れる林道はあるが、少し踏み込むだけで躊躇するような路面状況。傾斜、ぬかるみ、背高い雑草を注意深く乗り越え8km進み、現れたその巨大な姿に「あれだ!」と叫びました。
「松保の大スギ」。幹周囲1,200cmを超える、単幹形状では東北最大級の巨大杉です。枝葉から幹が垣間見えた時の衝撃は忘れられません。植林の杉と同じ種だとはとても思えない。はっきり言って、モンスターです!
雪国に生きる裏杉の特徴を示し、高くない位置で多数に分岐する大枝は、隙あらば新たな幹を生もうと天と地を同時に目指します。色艶よく、ヤニを滴らせる樹皮からはパワーをもらえる……どころか、襲いかかってきそうな野生を感じました。
現在でも悪路を通って、この場所で稲作される方がおられるのだとか。これだけ開けた空間に単独の巨樹が目一杯成長していること自体、とても貴重な眺めです。
「松保の大スギ」のような巨樹を訪ねることは、非日常の達成感を感じる冒険でもあります。地図で道と地形を念入りに調べ、撮影機材や装備を整え、勇気を出して挑戦する。巨樹によっては、軽登山になる場合もあるし、車ごと船で運ばれ2,500km……ということも。話は尽きません。
遠いけれど、だからこそ感動は大きい。未訪の巨樹へはもちろん、ひときわ鮮明に記憶に残る「松保の大スギ」へも、ぜひもう一度会いに行こうと決めています。
日本の狭さと広さ、自然の美しさと険しさを同時に感じられる巨樹探訪の旅に、あなたも出発してみませんか?
幹周り | 1,210cm |
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樹高 | 28m |
樹齢 | 約1,100年 |
保護指定 | 山形県指定天然記念物 |
所在地 | 山形県西村山郡大江町松保 |
交通 | JR「左沢駅」から車で50分。県道27号を西へ、貫見集落内「貫見こぶし館」手前で南下、荒れた林道を8km走行。スギへの案内標識あり。(南側から北上する短いルートもあるが、車の走行は難しい。熊にも注意が必要) |
著者 | 井ノ上亮太(茨城県在住 全国巨樹・巨木林の会会員) |