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朝日小学校のアカメヤナギ

2019.6.25

 7年ぶりに再会した巨樹は、朝日小学校の広々とした校庭の東側に、堂々と大ケヤキを従えてそびえていた。遠目でも左右に伸びた枝振りはバランス良く、風雪に耐えた幹の粗い感じが伝わってくる。山梨県の巨樹・名木100選の一本「アカメヤナギ」である。

 この巨樹は甲府市立朝日小学校にある。大正14年、その前身である朝日尋常高等小学校が創設された時には既に存在していたそうだ。樹齢100年は越えている。

 朝日小学校は甲府市の北部に位置し、現在約200名の児童が学ぶ歴史ある小学校。アカメヤナギは学校の象徴として歴代の卒業アルバムを飾り、児童の写生のモデルとなり、環境学習の教材でもある。また、涼しい緑陰を提供し児童を見守りつづけている。

アカメヤナギと子どもたちの写真

奥がアカメヤナギ、校庭で元気に遊ぶ子どもたちの姿も見える



 平成26年2月、甲府市は未曾有(みぞう)の積雪140cmの大雪に見舞われた。その時アカメヤナギも被害にあった。幹が割れ、はりだした枝も折れてしまう大きな痛手を負った。

 近づいてみると割れて空洞化した幹には補修が施され、幹の割れ防止を目的とした枝の剪定もされ、3本の柱によってその一部が支えられていた。平成29年には、国土緑化推進機構事業の「学校環境緑化モデル事業」の指定を受け、長寿命化の対策が施された。また、同時に、隣接する大ケヤキと共に根廻(ねまわり)の環境整備も施され、これらは地元の新聞で報告された。訪問前に雪害は聞いていたので再会するまでは心配だったが、以前の美しい樹形にくらべ変化は見られたものの、全体が瑞々しい6月の緑で覆われ樹勢も感じられ安心した。

柱に支えられている木の写真

柱に支えられているが元気に生きている



 巨樹はその「存在」自体が長い時間を生き抜いた究極の自然美であると思うが、人間の営みを映しだす巨樹にまつわる物語も興味深い。

 朝日小学校のアカメヤナギは学校通信のタイトルになり、また隣の大ケヤキとケヤキ群はPTAによる児童の安全を守る「けやきパトロール」の名にも活かされている。さらに学校要覧の表紙にもアカメヤナギが登場している。学校の「象徴」に加え、唯一無二の人格があるかのような大きな存在になっていた。去りがたく見上げれば、緑の宇宙が空に向かって広がっていた。

朝日小学校のアカメヤナギの地図

幹周り 485cm
樹高 11m
樹齢 100年以上(推定)
保護指定 山梨県の巨樹・名木100選
所在地 山梨県甲府市塩部1-4-1 朝日小学校校庭
交通 JR「甲府駅」から徒歩12分
著者 小川はるみ(山梨県在住 全国巨樹・巨木林の会会員)