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尾所(おそ)の桜

2019.4.26

開花(2016年4月15日)



 「尾所(おそ)の桜」(ヤマザクラ Cerasus jamasakura(バラ科サクラ属))は鳥取県境の岡山県津山市阿波(旧阿波村)の山里にあり、昔から地域のシンボルツリーとして保護されてきた。

 この木には、「その昔(1450年・宝徳2年の頃)、修行のため峠超えをしていた山伏が、休憩のためにこの地に立ち寄り、持っていた杖代わりの山桜の枝を地面に挿したまま忘れて立ち去ったところ、そのまま根付いた(津山市公式サイトより※)」と云う言い伝えがある。
 また、この桜は所有者の太田進氏より旧阿波村に寄贈された。

尾所(おそ)の桜紅葉の写真

紅葉(2018年11月5日)



 この地は中国山地の南面にあり積雪も多く、春から秋にかけての生育時期も短い。また台風の時には山からの吹き下し、谷からの吹き上げもあり、生育環境は良くない。しかし土壌は花崗岩の崩積土で排水も良く、すぐ横に谷川が流れ、立地条件は良い。この様な立地条件が幸いし、今日まで生育することができたと考える。但し、根元付近の土壌は長年の観光客などの踏圧(踏みつけ)により、硬くなっていた。(山中式土壌硬度計測定値:27㎜)

 1990年代後半より横の道路にて材木運搬等が行われ、太い下枝が交通事故にあう。その後、道路の付替、腐朽部の治療、幹のブレーシング(大枝と大枝をワイヤーで互いに結束することにより、引っ張り合って枝折れを防ぐ)等が行われた。その後、台風による枝枯れ、コフキサルノコシカケ、ウメノキゴケの発生等により生育不良となり、2014年12月には枯枝切除、コフキサルノコシカケ、ウメノキゴケ防除を行った。枯枝を切除した切口部分には防水剤を塗布し、コフキサルノコシカケには防菌剤を樹幹注入、ウメノキゴケは酸性薬剤にて防除を行った。枯枝切除作業では高所作業車が使用できなかった為、ロープクライミングのできる作業員が行った。硬くなった土壌の改良にはダガー(地中に圧縮空気を送って土壌改良する機械)を使用し、穴には割竹を挿入した。またアースオーガ(穴掘り機)を使用して穴をあけ、木炭粉末肥料を施用した。

 こういった治療の甲斐あって2016年4月15日には写真のように開花し、さらに2年後の2018年11月5日には、こちらも写真のように紅葉も美しく見られ、生育良好となった。この地域では「桜を守る会」により開花時に桜祭りが開催され、村外からも多くの観光客が訪れることもあり、保護育成が行われている。なお、津山市公式サイトに開花状況が掲載される。
※津山市公式サイト:https://www.city.tsuyama.lg.jp/

尾所(おそ)の桜の地図

幹周り 500cm
樹高 15m
樹齢 不明
保護指定 岡山県指定史跡(名勝天然記念物)
所在地 岡山県津山市阿波1927番
交通 中国自動車道「津山IC」から車で約40分、JR因美線「美作河井駅」から徒歩約1時間10分
著者 國忠征美(樹木医、岡山県在住)